2016年5月29日日曜日

~平凡で平和な世界 部活動編Ⅳ~

「小学校の頃の話だけどね、西原さんと僕は同じ学校だったんだ。そのころ西原さんは校区内では誰も知らない人がいないくらいの不良というか・・・いじめっ子だったんだ。誰も手がつけられないくらい荒れててね。僕はいじめられることはなかったけど、みんな被害にあってたんだ。で、ついたあだ名がデビルオーガ。鬼と悪魔なんて子供じみた名前なんだけど、今思い出しても、その名前に負けないほどに強かった。」
ここまで聞いて僕はここまで言われた西原さんの顔を伺ってみた。うつむいたまま顔を上げない。反論しないと言うことは、本当なのか?
牧君は続けた。
「そして、六年の夏だったかな。ある事件が起きた。ほかの校区の人にはあまり情報は回ってないかもしれないけど、西原さんはこの学校に乗り込んだんだ。理由は僕も聞いてないし、今も聞く必要はないと思っているけど、その事件でこの学校の負傷者が十数名出た。その時は学校から討伐隊がすぐさま派遣されて、被害は最小限で済んだけど、なかなかの衝撃が学校にはしった。さっきの生徒たちも、それを知っていたんじゃないかな。」
西原さんはまだ、うつむいている。
「その後、何かのきっかけから、西原さんは更生をして今のような温厚で優しい性格になったんだ。あんな事件を起こしたから、この学校に来ることは普通にはあり得ないことなんだけど・・・」
その時、西原さんがはじめて口を開いた
「ここの理事長が私に言ったの。うちに来て、今回の件の分しっかり償わないか、今までのこともあるし、そのまま地方の中学校に進むのはつらいだろうって。私は牧君が言った通り、荒んでいた。いじめてきた人には今でも謝って回りたいと思ってるし、この学校でも償いをしたいと思ってる。平野君、変なことに巻き込んじゃってごめんなさい。文芸部、入りたかったんでしょ?」
俺はもうそんな気持ちを持っていなかった。あんなヘタレみたいなやつしかいないような部活なんて、入ったって意味がない。
「いや、もういいや。実際もう興味なくなったし。」
僕がそういった時、後ろで声がした。
「あら、あなたは・・・」

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